映画版「ピーターラビット」(Peter Rabbit)を映画館で観てきました。言わずと知れたビアトリクス・ポターによる世界で最も著名な児童書を原案に、現代的な3DCGでまったく新しい物語にしたものです。
初の実写化映画ということで、ピーターラビットが実際に活き活きと動く様子は、原作を読んだファンとしてはぜひ観てみたいと思ったのではないでしょうか。
原作とはまったく異なるピーター像
ファンとして一番気になった(心配した)のがこの点かなと思います。予告編が公開された当初は「ビアトリクス・ポターの原作絵本に対する冒涜である」といった批判まであったようです。
特に日本語公式サイトでは「愛らしさ、ロマンティック」を(特に一番初期の予告編で)前面に出していますが、原作とはまったく別物です。心穏やかで優しいピーターではありません。いたずら好きでやんちゃな(パーティーピープルでラッパー的な)、コメディタッチでクールなピーターが主人公です。
原作好きでこの映画のことをよく知らない母親が、子どもに観させたくて連れて行く…、これは一番やっちゃいけないパターンです。
原作が末長く愛され続けるためには、新しいファンを獲得していかなければならないということがあります。都会の喧騒を好まず農作業など自然を愛するビアトリクスさんからすると、こういう作品は望んでいなかった可能性はありますが…。
ただ、2020年には続編の公開も決まったようで、この映画が世間から広く受け入れられた証拠だと思います。
あまり子ども向けの内容ではない?
映画としてはあまり子ども向けでない気がします。海外だとこれくらいは今は普通なのかなと思いますが、ちょっと暴力的すぎるかなと。いくら敵役とは言え、トーマスをアナフィラキシーショックで死に至らしめかけたのはさすがにやりすぎだと思いました…。
かなりのいたずら振りなので、小学校の高学年のお子さんであれば問題ないと思いますが、低・中学年の場合は少し検討が必要でしょう。あと、小さなお子さんだと内容そのものがあまり理解できなかと思います。
笑いが各場面に散りばめられていて、余計なことを考えず単純に楽しめるストーリーであり、大きなテーマの一つがラブストーリーなのでカップルにオススメの映画と言えるでしょう。
ストーリーとシーンについて
ストーリーですが、やんちゃをもう少し控えめに描いた方が、キャラクターにスッと感情移入できた気がします。
畑をわずかの間に完全に食い荒らしてしまうなど、正に「害獣」であることを自ら証明しているようなもので、人間側が理不尽なようには思えませんでした。農家の人も畑を守らないとやっていけないのですから…。
あと、田舎の景色は確かによいのですがもう一つな気がしました。エンドロールを見て気づいたのですが、撮影場所はシドニー(オーストラリア)でした。どうりで俳優さんもオーストラリアやニュージーランドと縁が深い人が多いと思いました。
今ひとつと思った原因はおそらくここで、やはりここは原作と合わせてイギリスのすばらしい田園風景で撮影してほしかったなと思います。
出演者について
主演のピーターの声は、イングランド出身の人気司会者・コメディアンの「ジェームズ・コーデン」(James Corden)です。トップアーティストたちと一緒に車で歌いまくる「カープール・カラオケ」(Carpool Karaoke)で見たことがある人も多いのでは。
彼が声優で主演というだけで、海外では話題になったのではないでしょうか。このヤンチャでお茶目なピーターは、まさに彼そのものな気がします。ストーリーに合わせて彼を選んだのかその逆だったのかは分かりませんが、この映画のピーターのキャラクターにおいてかなりの部分の影響を与えているかと思います。
あと、エンドロールを見てびっくりしたのですが、オーストラリア出身のシンガーソングライターの「シーア」(Sia)も出演していたのですね。ハリネズミのティギーおばさん役です。電気柵のシーンではいい味を出していました。
ちなみに、コーデンとシーアは、この映画よりも前にカープールカラオケで共演しています。
ピーターの敵役のトーマス・マグレガー役はドーナル・グリーソンです。彼はやはり独特の存在感と憎めない感がありますね。この役にもぴったりだったと思います。ちょうど先日記事にしたアバウト・タイムでもいい役を演じていました。すばらしい映画なので、彼の演技が気になった人はぜひ鑑賞することをオススメします。
映画序盤に亡くなってしまうマグレガーおじさん役はサム・ニールです。映画「ピアノレッスン」の旦那役の俳優さんです。さすがにあれから20年以上経っているので、映画を見ている時にはまったく気付きませんでした。
主題歌「I Promise You」
この映画の主題歌「I Promise You」ですが、一度聞いてとてもよい曲だと思いました。映画のエンディングと内容にも合っていると思います。
主演のコーデンが歌っています。ミュージカルなどの経験もあり、カープールカラオケでもいつも歌が上手だなと感心していましたが、ここでもさすがと思わせてくれます。
横断歩道でミュージカル「Crosswalk the Musical on Broadway」
映画の話から脱線してしまいますが、ミュージカルといえば、コーデンの番組の企画で、横断歩道が赤信号の間に、公開中の人気映画のミュージカルを実際の俳優さんと演じる「Crosswalk the Musical on Broadway」というのがあります。これがクオリティも高く面白くて個人的に好きです。本物の俳優を使って公道でこんなことができるなんて、アメリカならではという感じですね。
「美女と野獣(実写版)」と「グレーテスト・ショーマン」の回のリンクを貼っておきます。
あらすじ
以下、映画の公式サイトに掲載されているあらすじと、予告編です。
ピーターは世界で一番幸せなウサギ。たくさんの仲間に囲まれ、画家のビアという心優しい大親友もいる。亡き両親のことを想うと寂しいけれど、ビアの存在がすべてを吹き飛ばしてくれる。ところがある日、大都会ロンドンから潔癖症で動物嫌いのマグレガーが隣に引っ越してきたことで、ピーターの生活は一変!今までの幸せを守りたいピーターと、あの手この手で動物たちを追い払おうとするマグレガーとの争いはエスカレート。さらにビアへの“恋心”も絡まって思わぬ大事件に発展!ピーターはあるミッションを秘めて、初めてのロンドンへ向かうのだが——。